2009年10月20日火曜日

値段と質、どちらを見極める!?

昨今の不景気の折、消費者の目は、どうしても「価格」に目が行く。私も、その一人だ。
家計の財布の紐を握る主婦は尚更だ。

そうした社会背景のなかで先週から、常識を破る価格の商品が、世間を賑わしている。

一つは、紳士ビジネススーツ。一着が、なんと5,800円なんだとか。
これは、紳士服メーカーのAOKIが展開する生活応援キャンペーンでの商品。

◆株式会社AOKIのプレスリリース
スーツ・シャツ・タイの3点が揃う「究極7,000円」セット登場!
「緊急!生活応援大セール」改正決定 10月17日からAOKI全店でスタート
[PDFファイル] (2009年10月13日発表)

3点セットでも7,000円ということで、業界最安値。

更に、もうひとつ。

時を同じくして、あの「激安の殿堂」のキャッチフレーズで知られるディスカウントストア「ドン・キホーテ」も、プライベートブランド商品を14日から販売を開始した。

食品や衣料品など148品目を展開するらしいが、その中での驚きの商品が、ジーンズ。
なんと、1着690円なのだと。まさに、驚き。。

◆ドン・キホーテ
プライベートブランド専用サイト:「情熱価格」

すでにこのジーンズ、完売の店が多数でており、メンズが11月上旬、レディスが12月上旬に発売なのだとか。

確かに、これらの安さは凄いけれども、「本当に、商品の質は大丈夫なのか」とか、「製造している会社は、潰れないのか」とか、いろんなことを考えてしまう。


流通業を古巣とする私としても、お客様に対して、如何に良いものを、少しでも利益を確保しながら安くするということで、一銭単位での原価管理をしながら、奮闘していることは、重々承知している。

しかし、一方で、適正な価格とは、どうあるべきなんだろうというのが、最近の気になることの一つだ。

「モノが売れない、だから値段をさげる」
なんとなく、こうした考えが、世間が全般的に安直なロジックに動いていないかと気になる。


そうした中で、「おお、こういうスタンスで頑張っているところがあるのだ」と思わされる会社が、テレビで紹介されていた。

それは、農産物を直売している「みずほの村市場」というところだ。

農産物直売所「みずほの村市場」のWEBサイト

ここのビジネスモデルは、農産物を生産する農家自身が、自ら適正な値段をつけて、安心安全な商品を直売するというシステム。

ここの代表者である長谷川氏の言葉を借りると・・・・・
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「本物の農産物」を消費者の皆様に安定供給する為には、まず農家が再生産できるような適正価格で販売しなければなりません。そうすることによって農家は経営計画を正確に立てることができ、農業だけで生計を立てるプロの農家として自立できるわけです。 農家が自立することによって「本物の農産物」を安定価格で安定供給することができ、消費者は将来にわたって安心して農産物を求めることができます。
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とのことだ。


非常に、ごもっとも。

ここで購入されるお客様の購買単価も簡単に1万円を超えるなど、非常に高い。
しかし、お客さんいわく、「味も良いし、作っている人の顔も見えるから安心」とのこと。

確かに。

代表の長谷川氏曰く、高くても買ってもらえる人に対してのみ、買ってもらいたいとのこと。
言いかえると、きちんと質を見極めて購入してもらえるお客様に買ってもらいたいとのこと。

更に、同直売所に、農産物を販売したいと後発で参入する農家は、同一商品に対して先行販売する農家が決めた価格より低い価格では、販売できないルールになっているのだという。
つまり、農家には「価格」ではなく、「質」で戦ってほしいというとのことだ。
そして、この「質」を維持するために必要な利益を確保することを前提とした計画を行い、生産者である農家自身が適切な価格を設定するということなのだ。

私は、この「マーケットに対して質で競争することを推奨し、それを経営維持できる適切な計画に基づいた価格設定」というところに非常に共感を覚えた。

ここ数年の不景気で、世の中がどうしても「価格優先」で、「値下げすりゃいい」という安直な発想になっていることが、更に自分たちの首を絞めて、デフレスパイラルを加速させてしまっている感が否めない。

良いものは、それなりの価格がするのが当たり前。
買う側も、その良さをきちんと評価し、目利きできるスキルを養う。。。。

情報が氾濫するこの時代に、正しい情報を見極める目が重要なスキルの一つになっていかなければならないと、つくづく思ったのだった。