東京上野の谷中にある、旅館「澤の屋」がテレビで取り上げられていた。
なんとこの旅館、この不景気のなかで稼働率100%で多くの外国人が宿泊しているらしい。
■旅館「澤の屋」
規模も大きくない、家族経営のこの旅館であるが、80カ国、のべ7万5千人を超える外国人が宿泊しているとのことだから驚きだ。
さて、この旅館のご主人である、澤功(さわいさお)氏は、「下町の外国人もてなしカリスマ」として、観光カリスマとしても選ばれている人物。
■国土交通省 観光カリスマ
観光カリスマという言葉があることも初めて知ったが、そう呼ばれる所以たるお客様へのおもてなしも素晴らしい。
スイスから観光で来日している家族が、朝食で水族館のことを話していたら、どこの水族館がよくって、今日はどんなショーがあるとかを、詳細に調べて教えてあげたりする。まさに、お客様が欲しい情報の目利きだったりする。
また、日本語がわからないお客様へは、日本語の手書きメモを書いて渡したり、至れり尽くせりだ。
更に、こうした「お客様へのおもてなし」も、ご主人により、きちんと記録を取られているのだ。「どこで柔道着が買える」とか、「どこの店が安い」とかがわかるパンフレット、メモ書きから領収書に至るまで、そうした木目細かい情報がファイリングされている。電話帳数冊分の厚さにもなっているからすごい。これこそ、この旅館のおもてなしナレッジの集大成だ。
外国人客の声も、「いくつもの旅館やホテルを調べたが、ここが最高だ」とか。
困っているお客様の問題を解決してあげたいという「おもてなしの心」が、この旅館のサービスのナレッジを蓄積し、結果として100%稼働率という成果に導いているのだろう。
テレビでは、コメンテーターが「情緒、情報、人情の三拍子が上手く揃っている」とコメントしていた。
確かに「情報」という言葉は、「情けに報いる」と書く。
情報の発信者、受信者ともに、相手を思いやる温かい心があってこそ、それぞれが報われるのだろう。
「情報化社会」というのは、単に通信・電算技術が発展した社会ということではなく、それを使用する人間自身も「お互いを思いやる心」があってこそが、本来の姿なのだろう。