2010年5月13日木曜日

技術伝承に悩む、建設現場。。

今朝のNHKのニュースで、建設現場での仕事の質が低下しているということを報道していた。

若い世代に技やノウハウをきちんと伝えきる前に、年齢層の高い人材がどんどん減ることで、このような現象を生み出しているのだと。
更に、下請けなどに業務を委託することで、更に自社にそうした技やノウハウが蓄積しないのだとか。

このニュース。
ただ単に建設現場における現象だけでないように思える。

日本社会全体を見ても、団塊の世代が一気に定年を迎え、昨今の不景気による大量リストラなどにより、同様な事態を招いているのではなかろうか。

終身雇用のスタイルが廃れ、人材の流動化が過去に比べて激しくなった。
しかし、一方で、こうした無形の資産をどう管理するかということには、余り目を向けられていない。

日本企業がかつての元気を無くしているのも、このような側面に一部は起因しているのではなかろうか。


こうした社内のナレッジマネジメントについての理論は、一橋大学名誉教授の野中郁次郎先生によるSECIモデルという概念が有名であり、世界的にも広まっている。

しかし、いざ、企業でナレッジマネジメントを実践という視点でみると、欧米諸国に比べて非常に遅れているし、なかなか定着しないようだ。

ナレッジマネジメント=システムの導入というイメージをもたれる場合があるが、そうではない。これは、システムベンダーが植えつけた間違った認識である。

ナレッジマネジメントは、社内に蓄積する情報に付随するノウハウ、技術知識などを可視化させ、明文化させ、会社全体で共有化し、使える化するマネジメント手法だ。

ナレッジマネジメントが、定着しない理由として、上記のシステム導入との勘違いもそもそも論ではあるが、これ以外にも、曖昧さを美徳する国民性の問題。記録化・明文化を軽視する商習慣の問題。国民性同様に曖昧な表現の多い日本語そのものの問題。企業における評価制度、無形資産の軽視の問題。こうした多くの側面が、これを阻害している。


しかし、時代は変わり、人材が流動化するのが当たり前の時代に。

リーマンショック以降、未曾有の不景気を迎えたなかでも、元気のよい企業はある。
それらの企業に共通するのは、理念の共有、知恵の共有、マインドの共有などを、経営層から一般社員、パートアルバイトまで、組織横断的に積極的に取り組んでいる。

元気が良い理由は、これだけでは勿論ないが、大変な時代の中で、社員自身がモチベーション高くいられるのは、こうした取り組みも重要な施策の一つだ。


これからの時代は、目に見えない無形の資産を、如何に可視化しつつ、それを組織全体で活かすことができるかが問われる時代にもなっているのだろう。